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一口に宿坊といっても
今では
ホテルライクな宿坊や、最近では温泉のでる宿坊など、
様々なタイプのものがあるそうだ。
ただ今回宿泊した無量光院は
どちらかといえば僧侶の修行の場に近い形があると伺い
ここを選ぶことにした。
海外からの宿泊客も多く、相当に寒さが厳しいと聞かされていたし、
宿坊も初体験という事も重なり
少し緊張していた。
まずチェックインを行い、その後
僧侶の案内でお部屋に通された。
そこはいずれも廊下に面した部鍵のかからない一間となっており、油断すると寒気が足元から通り抜け、僧侶が足早に廊下を歩く音も、その音量を変えることなく直接侵入してくる。
洗面所やトイレは他の宿泊客ともちろん共用。
これが必要最小限の生活である、
という気持ちで臨めば、6畳一室の部屋には暖房も炬燵もあり、外界の寒さからも思いのほか守られているわけで、観光客馴れしないよう、たどたどしくも一線を越えまいとする若い僧侶たちの、修行の一環としての所作もなんだかとても心地よく感じられた。
なにもないのだが、ここには持て余すほど
時間があった。
そしてこの時間を
本を読み、お風呂をとり、失礼とは知りつつ、
炬燵に入りながらの写経に費やした。
さて夕食である。
五時半に二膳の食事が粛々と運ばれ
そこには暖かい湯豆腐も添えられていた。
ここでの食事には、楽しむというより
不思議と
戴く事への感謝がわいてくる。
さて、翌朝は六時に院内に鐘の音が鳴り響いた。
外はまだ暗かったが、
よく見ると前日とはうって変り雪景色となっている。
深々と引き締まった空気で溢れた廊下を移動すると、
講堂ではすでに護摩焚きが行われていた。
この護摩焚きの世界が、独特なものだった。
無量光院では、他の宿坊とは違って、観光客向けではない1時間半のフルのお勤めを行っていた。洞窟に入ったかのような暗い2部屋の中で1部屋は護摩焚き、隣り合ったもう1部屋では読経が行われた。とうとうと続く勤行のなか、片や火を焚き続ける儀式に、途中一般客も参加できる水とりが行われ、火と水の修行という、密教の世界観を身近に味わう事ができた。
まさに
宿坊での時間と体験は
かけがえのないものとなったのである。
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