鍼灸を志し
鍼灸の仕事をするには、
1、認可を受けた専門学校などで3年間勉強し卒業
2、国家試験の合格、免許の取得
が必要で、この3年間に、鍼を打ったり灸をすえたりという技能を学ぶ実技実習だけでなく、東洋医学概論や経穴概論、鍼灸の基礎理論についてなど東洋医学的な勉強、そして、解剖学や生理学、リハビリテーションなど西洋医学の基礎や臨床科目を通して、様々な西洋医学的な症候に対する適応や禁忌についても学びます。
ところで、様々な医療に関わる職種で、日本において医師の指示を特に受けずに治療が行え、そして開業が可能な職種は、
はり師きゅう師
あんまマッサージ指圧師
柔道整復師
(柔道整復師は治療対象に制限がありますし、はり師きゅう師あんまマッサージ指圧師についても治療方法には当然範囲があります)
に限られております。ですからその責任を考えれば、この勉強内容や期間は必要で、さらなる研修も求められます。
経穴(けいけつ、つぼ)について
たとえば、経穴学(けいけつがく)で学ぶこと。
まず、経絡の走行と身体の寸法割りを学んだ後、約400ほど経穴について、その場所や臨床的な意義と、実技ではその経穴への刺鍼や施灸の仕方までしっかりと学ぶことになります。特に体幹で重要になるのは、腹側では募穴、背側では兪穴と呼ばれる分類の経穴群で、それぞれ、体幹の内部の臓腑と関連し、治療による奏効が述べられています。
経穴の名前は、古典的につけられた、日常では使用しないような文字を今でも使用しています。ですが、場所の特徴が表されていたり、治療についての意味がこめられたりしているため、その名前を覚えれば経穴の位置や意味づけを明確にすることにはなる、とはいえ、他の様々な勉強とともにこの名前と位置を正確に400近く覚えるのは本当に大変。 しかし、漢字も難しく、勉強中では覚えるだけだった経穴も、実際に臨床を通してその経験から再度確認すると、そこに隠されている意味に気づく(勉強中に気づかなかったわけですが)こともあります。
経穴の再確認と実感
たとえばその配列。学生時代は、経穴を、ついそのひとつひとつ覚えることばかりになりますが、本来の経穴はながれのなかにあり、正経に属するものは身体の縦方向に繋がりますし、また、臓腑との関連で考えると、その横並びも重要でした。このことは確かに、学校での授業で聞いていたはずですが、実体験のなかでようやく理解できたことなのでした。
さらに、臓に関して言うと、胸部にある肺・心がその順番で上肢の正経と繋がり、腹部にある肝、脾、腎がその順番で下肢の正経と繋がる。今ではあたりまえのことも、まさに目からウロコ。
つまり、治療を受けると、実際に症状を訴えていない場所に鍼を打たれて驚くことがありますが、全身は経絡経穴で繋がっている、といういうことだったのです。
身体にみられた経絡経穴のマトリックスをこれからも考えたい。
まさに温故知新。
疑問、そして理解
学校での勉強は3年間ですが、卒業してからが本当の学問。さらに勉強を続けていかなければ、より良い治療は行えませんし、その取り組みに、西洋医学的な情報とともに過去の英知がつまっている東洋医学的な古典をいつまでも大切にしたいと思います。
患者さんが元気になる姿を目の当たりにし、また、長い歴史に育まれた心に触れられるこの仕事は、私にとって掛け替えのないものであり、この仕事ができることにとても感謝し、全力で毎日の治療に取り組んでおります。