季節のリズム
古代では、太陽と月の運行を理解することが大変に大切でした。 つまり、農耕を行うことで生活を立てていた人たちのお話です。 その人たちには、種の植える時期から収穫の時期まで、季節の移り変わりは重要なもので、そこに太陽との関係があることが理解され、太陽の運行のリズムから一年を求めました。
太陽の一年からは、その位置、つまり昼と夜の長さから冬至・夏至・春分・秋分がもとめられ、さらに、立春・立夏・立秋・立冬から季節を考えた。そして、24節気の区分につながります。 太陽からみた一年の四季の区分は大変有効でした。
ただ、年の違いで様々な現象の差が起こることまでは24節気で現すことができず、そこに月の影響や惑星の影響が考えられました。
月を見上げて
月についていえば、一月という言葉があります。 それは本来、月が欠けていた状態(朔月)から、満ちる状態(望月)、そしてまた欠けるという一定のリズムが繰り返されることに基づいてつけられた言葉。そして、どの地域でも月の形の変化が肉眼的にはっきりとわかったことで、これが暦の基本となり、太陽からの光の量の変化と組み合わされていった。それが、太陰太陽暦(太陰とは月)、日本では旧暦と呼ばれます。 ただ、その朔月から望月、そして朔月までの間隔は29.53日。これは現在の一月(30日あるいは31日)とは違います。ですから、そのズレを埋めるため、太陰太陽暦では閏月という月が考えられ、ほぼ3年に一度、年に13月になることもありました。
一日は太陽とともに
また、一日についても、日が昇って、沈み、また日が昇るということを重視しました。
そこで、江戸時代以前の時間区分では日の出と日の入りが重要であり、一刻はあくまでもその日の出と日の入りの間を等分に割って決めていたのです。
ですから、たとえば、冬至の頃の日中の一刻は約1時間50分ほどですが、夏至の頃は、約2時間40分。この差は約1時間。絶対的な1秒を決めて、その積み上げで時間を計っている現在からは考えられない時間感覚かもしれません。
現在の一時間や一月は、明治以降につけられたものであり、たとえば一月はあくまでも太陽の一年に基づいて12区分されたものですから、本来の一月とは異なってしまいましたし、一時間についても同様です。
確かに、この暦や時間区分の改変は、日常生活の仕組みを便利にし、世界と時間を共有するという意味でもとても重要な変化です。しかし、たった100年ほどで、人々と自然の間に感じられた時間感覚は失われ、長い間旧暦とともに積み重ねられた季節感が感じられなくなってしまったということも事実で、反面、文化感覚の欠如が恐ろしくもあり残念なことですね。
時々、暦から自然と向き合うのも良いかもしれません。
二十四節気について
ここで、太陽の高さと昼間の時間から観た季節、つまり二十四節気の概略をまとめました。なお、太陰太陽暦では、それぞれの中気が収まる朔望月が月の名前になりました。
春1)立春:新暦2月4日頃。 春が立つ(はじまる)日。
節分の翌日で、八十八夜はこの日から起算する。
春2)雨水:新暦2月19日頃。 旧正月寅の月の中気。
氷が解けて水となり、雪が雨になって降る。
春3)啓蟄:新暦3月6日頃。
蟄虫(冬ごもりの土中にかくれた虫)が戸を啓く(穴から出てくる)。
春4)春分:新暦3月21日頃。 旧2月卯の月の中気
春の分ける日。春の彼岸の中日。昼夜の時間がほぼ等しい。
春5)清明:新暦4月5日頃。
春先の清らかで明るさがさす、いきいきした様。
春6)穀雨:新暦4月20日頃。 旧3月辰の月の中気。
春雨が降り田畑をうるおし種まきの良い時期。
夏1)立夏:新暦5月6日頃。
夏の立つ(はじまる)日。
夏2)小満:新暦5月21日頃。 旧4月巳の月の中気。
万物が少しずつ長じて満ちる。
夏3)芒種:新暦6月6日頃。
芒(のぎ)の穀類(甘稲など)の植え付けの時期。
夏4)夏至:新暦6月22日頃。 旧5月午の月の中気。
夏の至る(きわまる)日。北半球では昼が最も長く夜が最も短い。
夏5)小暑:新暦7月7日頃。
少し暑い。暑さが日増しに加わってくる。
夏6)大暑:新暦7月23日頃。 旧6月未の月の中気
大いに暑い。夏の土用(立秋前まで18日間)に含まれる。
秋1)立秋:新暦8月8日頃。
秋の立つ(はじまる)日。
秋2)処暑:新暦8月23日頃。 旧7月申の月の中気。
暑さがおさまってくる。
秋3)白露:新暦9月8日頃。
陰気重なり露こごり白色となる。
秋4)秋分:新暦9月23日頃。旧8月酉の月の中気
秋の分ける日。秋の彼岸の中日。昼夜の時間がほぼ等しい。
秋5)寒露:新暦10月8日頃。
露結び凝らんとする。
秋6)霜降:新暦10月24日頃。旧9月戌の月の中気。
霜が降りる。
冬1)立冬:新暦11月8日頃。
冬の立つ(はじまる)日。
冬2)小雪:新暦11月22日頃。旧10月亥の月の中気。
量は少ないが冷えて雨も雪となる。
冬3)大雪:新暦12月7日頃。
雪も多く降る時期をいう。
冬4)冬至:新暦12月22日頃。
旧11月子の月の中気 冬の至る(きわまる)日。昼が最も短く夜が最も長い。
冬5)小寒:新暦1月6日頃。
少し寒し。寒(立春前まで)の入りである。
冬6)大寒:新暦1月20日頃。
旧12月丑の月の中気。 大いに寒い。
春分や秋分の「分」とは、ほぼ昼と夜の長さが同じ、半分となる時期のこと。
また、夜が一番長いときに至ったので冬至、昼が一番長いときに至ったので夏至といい、クリスマスも、実は冬至から春が始まるとした、西欧のお祝いの時期と結びついたのでは、ともいわれております。
日本の新暦でみた七夕の時期は、梅雨時。ですから、夜空を見上げても天の川はよく見えないことが多い。ただ、旧暦7月7日は、今年なら新暦の8月26日。この時期でしたら、晴れのことの方が多いのでは。
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社会の発展とともに、身体とこころは注目されても、外の環境まではなかなか意識に及ばなくなりました。
そこでちょっと、たまには旧暦からみた生活も楽しんでみたいですね。