経穴(つぼ)は手当てから

子供のころ、身体をぶつけて強い痛みがでたとき母親からその部位に手をかざされて痛みが和らいだことや、お腹が痛くなったとき背中をさすられてその痛みが軽くなったという経験は多くの人にあると思います。

それが、手当ての始まり。

このような経験が積み重なり、身体の中の様々な症状に対して皮膚上にあらわれる反応点がみつかり、その部位の手当てにより、症状が緩和されるということがわかり、それがつぼと認識され、全身に400ほどみつかりました。

 

 

 

 

さて、「ながれ」の通路である経絡は、つぼが見つかる以前から認識されており、最初の頃はつぼとの関連は強調されてはいませんでした。しかしつぼの反応や治療が、経絡のながれと関連することがわかり、その結びつきが徐々にまとめられ、ほとんどのつぼが正経に所属するものとされました。

つまり、つぼは「ながれ」としての経絡の反応点、かつ治療点となり、
そして、つぼのことを経穴(けいけつ)と呼ぶようになったのです。

 

例えば足三里は、松尾芭蕉の「奥の細道」にもその名称がみられるほど有名ですが、足の陽明胃経に所属するもので、ここへのお灸は胃の活動を活発にします。

 

また重要な経穴には、さらに正経を代表するものに原穴、臓腑の反応点としてお腹に募穴などの名称がつけられ、治療の際にとても重視されました。

 

 

 

経穴の位置と形

さて、経穴は分肉の間にあるとしています。
分肉とは、筋の線維と線維の間にあり、今でいえば結合組織。

また経穴は現在、それぞれ取穴と呼ばれる方法でその位置が決められていますが、これは骨度法と呼ばれる、個人の身体の大きさを基準にする独特の計測法に基づいて統一的にまとめられています。

全身の経穴は、このつぼの形で生きています。 つまり、経絡や臓腑の変動があった場合にあらわれ、その内部にある何らかの状態の変化を抱えることになるため、そこを囲うようなツボの形につくられます。そして、経穴があらわれたりなくなったりするだけでなく、その内部を守るため、強く表面を触れられると経穴は、まさにツボの蓋を閉じるように表面から隠れてしまうのです。

ですから鍼灸治療では、診察法である四診に基づき、この経穴を閉ざさないように、いかに手の感覚で優しく的確に探し、その部位に必要な適量の刺激をすることができるかが最も重要になります。

 

 

 

「ながれ」を調える方法

経穴がみつかるとは内部に変動があるということ。この変動とは、「ながれ」や「かたち」、つまり経絡、とくに正経や臓腑の変動であり、その際体表に現れるのが経穴。さらに、その現れ方は特有の状態があり、その状態には虚実という名がつけられました。

臓腑の変動→正経の変動→経穴の虚実

そこで、経穴が虚しているときは補法、実している時は寫法、という方法が考えられて、その方法を行うために使われたのが鍼や灸であり、つまり鍼灸の補寫→経穴の調整→正経の調整→臓腑の調整により治療が進められたのでした。